したたる青
ぶつり、と、刃物で肌を切りつける。
傷口からは青い血が垂れ、指先へ伝っていく。
指の先には、こじ開けられた口がある。
開いた口にぽたぽたと、さっきまで自分の体に流れていた青い血が伝い落ちる度に、
どうしてかおかしくて、笑い出したくなってしまう。
己の眷属を痛めつけてまで不死を求めた自身が、今度は自分の身を傷付けてまで、
とるに足らない筈の人間を生き長らえさせる事に必死になっている。
そんな滑稽さに腹が立ち、また、背徳感からぞくぞくと身が震える。
『これ』が何を発端としていたかも、今ではちっとも見当が付かない。
庇護欲だったのか、彼女の内を汚したいという支配欲だったのか。どちらも真実で、だけれど渦のように混ざってしまったと思う。
お前は僕にこんなふうに愛されて、可愛そうだね。
ぽつりとこぼした独り言は、眠りに落ちている彼女には届かない。
触れた頬に指を滑らせる。
柔らかい。温かい。生きているのだと思った。
この熱を手放したくない。なんて。
(本当に、どうかしてる)
そう心の中で声が囁いた。